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【援護法Q&A 6】欧州の諸国では、民間人への戦争犠牲への援護補償はどのようになっているのですか。

 Q6. 欧州の諸国では、民間人への戦争犠牲への援護補償はどのようになっているのですか。


人的被害の補償

戦争被害補償における欧州諸国の制度の特徴は、「国民間の平等」と、「内外国人間の平等J です。その背景にあるものは、負担の平等とともに、人道主義があり、国際人道法における傷病者保護や捕虜の保護と同一の思想が背景にあると指摘されています。

つまり、国家の前に、人間一人一人を個人として大切にする思想に基づく補償が制度化されています。


<イギリス>

1939年に制定された「人身傷害(緊急措置)法」 が、第二次世界大戦中の一般市民の戦争被害補償の根拠法規になっています。

戦時戦後の緊急事態期間に、「有給就業者」、「非有給就業者」、「市民防衛志願兵(市民防衛組織の一員として認められた者)」 が被った戦争「傷病」に関連して、各種の給付が行われます。

そのうち、有給就業者と非有給就業者が「空襲などにより人または財産に与えられた衝撃に起因する身体上の傷病」も、障害の程度が重く、かつ長期に及ぶ場合に補償がなされます。障害者の医療費、臓業訓練、年金等のほか、死亡者の配偶者・遺児等にも年金や手当が給付されます。


<フランス>

フランスでは、「軍人廃疾年金及び戦争犠牲者に関する法典 第3 編 民間戦争犠牲者に適用される諸規則」の「第1章 民間戦争犠牲者」の規定が、根拠規定になっています。

この規定は、第一次世界大戦時の「戦争行為」の結果、「不具を生じせしめる傷病」を受けた「全てのフランス人」は、年齢・性別にかかわらず、終身又は臨時の年金の受給権を有する旨の規定が、第二次世界大戦中の「犠牲者」にも拡大されることになったものです。

給付の内容としては、障害年金、寡婦年金、遺児年金、両親年金が支給されます。また、障害加算、介助費用手当、障害程度に応じた重度障害手当・重度傷害手当、家族手当の加算もあります。特に、遺児は、「戦災孤児」 として、人間としての成長のための国の特別な保護と生計費、奨学制度に上積みした高等教育までの教育・職業訓練手当等の金銭的援助を受けました。


<ドイツ>

「戦争犠牲者の援護に関する法律」(1950年)に基づいています。

軍務又は、準軍務に関連して損傷をうけた者が、損傷により健康上、経済上の影響を受けた場合には、本人又はその遺族に対して、上記の援護法が適用されるとされています。その際、損傷の範囲が「戦争の直接的影響」等による損傷も援護の対象とされ、一般市民も適用を受けます。これらの戦争の直接的影響等と、損傷との間の因果関係の証明は、「蓋然性」で足りるとされていることも特徴です。

また、給付の内容としては、医療(リハビリを含む)、障害年金(障害の程度に応ずる)、遺族年金(寡婦年金、遺児年金、父母年金等)、戦争被害者扶助などがあります。また、遺族が高齢になった場合には、生活のための加給がなされます。


<イタリア・オーストリア>

その他、イタリアでは、1978年戦争年金統一法典により、また、オーストリアでも1957年の戦争犠牲者援護法により、軍人・軍属と民間人を区別することなく、戦争犠牲者に平等な扱いをしています。


物的被害の補償

以上のような人身被害だけではなく、物的損害の補償もなされます。

イギリスでは、1943年戦争被害補償法、フランスでは、1946年戦争損害法が、また、ドイツでは、1952年の負担調整法等です。

例えば、ドイツの負担調整法では、負担調整のための資金を、戦争による財産上の損害を免れた者に対する負担調整賦課金と連邦政府と州政府の補助金、貨付金の返済で賄われ、戦争の被害を国民全体で分かつという姿勢が明確に示されています。

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