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【お知らせ】総選挙の立候補(予定)者アンケート 結果報告

2021年10月21日
全国空襲被害者連絡協議会
共同代表  中山 武敏
吉田由美子
運営委員長 黒岩 哲彦

総選挙の立候補(予定)者アンケートの結果報告

 全国空襲被害者連絡協議会(全国空襲連)は10月19日に公示された衆議院選挙を前に10月上旬、先の大戦の空襲で大きな被害を受けた東京、大阪両選挙区の立候補予定者に対し、空襲被害者問題についてアンケート調査を行いました。空襲で死傷したり、孤児になったりした民間人は元軍人ら軍関係者と差別され、いまも国から何の援護も受けられないでいます。政治を志す人が、この問題にどう取り組むのかを知るための調査です。

 民間空襲被害者救済の運動は、支援する超党派空襲議員連盟(空襲議連)が空襲被害者救済法(仮称)案を先の通常国会に提出する寸前までいきましたが、自民党の協力が得られず、まだ審議に至っていません。援護のない戦後76年の間に多く被害者が亡くなり、また高齢化して、政治の谷間に置き去りにされています。調査は日米開戦から80年、運動開始から50年目という節目の年の総選挙に当たり、立候補予定者の空襲問題に対する認識と当選後の救済法実現に向けた決意を問いました。

※調査結果の下に質問内容があります。

 

空襲に加えコロナ問題の本質に関し質問

 設問は、①民間空襲被害者が、軍人のように国と特別な関係がなかったことを理由に援護されないできた現状をどう思うか ②戦時中は被害を受けた民間人を援護する法律がありながら、戦後、軍関係の法律は復活された一方で民間人援護の法律は廃止されたまま。どう考えるか ③当選したら空襲議連に参加し、救済法制定に尽力するか―など6項目。 

 立候補予定者の世代と選挙区との関係、さらに喫緊の課題である新型コロナウイルス問題をどう見ているかについても、回答者の立ち位置を知る参考として尋ねました。

 調査用紙は、9月末に新聞に掲載された立候補予想に基づき、東京の25選挙区の68人(実際の立候補者は96人)、大阪の19選挙区の65人(同67人)の計133人に直接送付しました。また、事務局の事情で、東京選挙区の共産党の予定者には用紙を党本部に送って回答を依頼しました。

 今回の調査の回答は記述式で、かつ歴史認識にかかわるため、回答率は低いと予想していましたが、10月18日までに届いた個人名での回答は、東京が21人、大阪が19人の計40人でした。東京、大阪の立候補予定者に直接送付した133人分のみを分母として単純に計算すると、回答率は約30%。回答者は東京、大阪とも野党の立候補予定者からが圧倒的に多数ですが、与党の回答者からも戦後政治を批判する率直な意見が寄せられました。 

 一方、回答の内容には、東京と大阪選挙区との間に目立つほどの差はありませんでした。以下、政党別の回答数以外は東西をまとめてご説明し、併せて、それを受けた全国空襲連の今後の活動の方向についてもご報告します。


政党別の回答数と「模範回答」を提示した党

 政党別の回答は、東京選挙区が自民3(うち空襲議連の非会員1)、公明1(非会員)、立憲民主3(いずれも非会員)、共産9(非会員7)、日本維新の会4(いずれも非会員)、無所属1。

 大阪選挙区が立憲民主5(うち空襲議連の非会員4)、共産9(非会員8)、日本維新の会3(非会員2)、社民1(非会員)、れいわ1(非会員)。 

 これらのうち、共産党はアンケートの質問項目について「Q&Aの想定問答集」を事前に用意し、立候補予定者はそれに沿って答えているため、回答文の構成、表現などがほとんど同じでした。日本維新の会の予定者は設問の6項目には回答せず、党本部がまとめて方針として一括して答えました。れいわ新選組からも党見解が送られてきました。

 

回答内容の分析から見えてくるもの

 以上を踏まえた上で、調査結果の内容を分析してみました。

 まず、立候補予定者の年代はすべて1945(昭和20)年から1995(平成7)年までの戦後生まれで、1960年代後半から70年代前半生まれの50歳代が最多でした。中学生まで育った土地は東京、大阪とも地元がほぼ半分を占めました。これらから高度成長時代に大都市圏で生まれ育ち、現在は社会の中堅の子育て世代―という人間像が浮かび上がります。 

 空襲問題に関しては「民間空襲被害者が国との特別な雇用関係がなかったため、援護の対象から外されてきたことを知っていたか。どう思うか」の問いには、どの立候補予定者も「知っていた。国として援護の対象とすべき」と回答。また「戦時中は民間人も戦時災害保護法で援護の対象になっていたが、戦後は民間人の保護法は廃止のまま。どう考えるか」には「民間人も国としても補償の対象にすべき」と答えました。

 「民間人被害者を援護する法律がないのは第二次世界大戦の当事国では日本だけ。どう思うか」には「新しい国会で被害ときちんと向き合う政治への転換を。空襲被害者救済法の実現を目指したい」という記述が多く、さらに具体的に「(軍人と民間人を分けずに補償する)ドイツをお手本として前に進めるべき」と、簡潔で踏み込んだ意見もありました。

 そのほかに、次のような回答がありました。

 「民間人の保護法を復活しなかったのは、不公平、不合理。空襲被害者の救済は、与党か野党かではなく、一人ひとりの政治家の問題だ」、「海外での遺骨収集もまだ終わってなく、戦後処理をしない無責任体制が続いている」、「被爆者であることを隠し続けて亡くなった叔母の思いを胸にがんばる」、「民間人補償の先例をつくることは戦争の抑止力になる」、「母は東京大空襲で姉を亡くし、父は長崎で被爆した。戦争を起こしてはならないというのが私の原点」など。

 また、新型コロナウイルス問題には「科学が発達した現代でもコントロールできないことがある。人間は謙虚であるべき」、「医療のぜい弱さ、格差、貧困、環境破壊などこれまで見ぬふりをし、先送りしてきた問題が限界に達したことを突き付けた」などがありました。


アンケート結果と全国空襲連の今後の取り組み              

 アンケート結果は、回答を寄せた立候補予定者に空襲被害者問題に関心を持っている方々が少なくないため、概ね予想された範囲の内容でした。しかし、空襲議連の幹部で回答してくれた方が顧問と事務局長だけというのは意外でした。

 その一方で、新人を含めて議連非会員の立候補予定者のうち25人が、当選したら議連に参加するという意思を明確にしていたことはアンケート調査をした成果と考えられます。これは、選挙後に空襲議連の会員を増やしていくための足掛かりになるでしょう。

 来年の通常国会で民間空襲被害者救済法を実現する方法の一つとして、議連の会員数をさらに増やすことが大きな力になるだろうと考えられます。


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<以下本調査の質問内容>

 

総選挙アンケート「空襲被害者問題をどう考えますか」

                             全国空襲被害者連絡協議会

簡潔にご記入願います

設問1:お生まれになった年(西暦)と小中学校時代を過ごされた地域をお書きください。

       【       年】 【         県(都、道、府)】


設問2:世界では2億3千万人が新型コロナウイルスに感染、470万人が死亡しました(9月23日現在)。どこまで広がり、人間社会がどうなるか予測もつきません。コロナ問題とは何だとお考えですか。

  

設問3:第二次大戦では、多くの民間人が空襲で死傷し、孤児になりました。しかし、軍人のように国と特別の関係がなかったからと、いまだ援護されません。ご存じでしたか。また、どうお思いですか。

 

設問4:一方で国は、戦時中は民間人にも「空襲から逃げるな」と強制し、被害を受けたときは民間人も戦時災害保護法で援護していました。戦後、軍関係の法律は復活されましたが、民間人の保護法は廃止のままです。どうお考えですか。

  

設問5:民間人被害者の援護法案はかつて、野党から14回、国会に提出されました。しかし、いずれも政府与党により廃案にされました。いまも「戦後処理は終わった」と言い張っています。戦後76年―大戦の当事国でそんな国は日本だけです。どう思われますか。

 

設問6:全国空襲被害者連絡協議会は、支援の超党派空襲議員連盟とともに民間空襲被害者救済法の制定をめざし、あと一歩のところまで来ました。来年は運動を始めて50年の節目の年。被害者と日本の未来のために必ず実現を―と期しています。当選されましたら議連に加わっていただけますか。

            参加します             参加しません           

 ※その理由はなんでしょうか。

 

最後に:設問以外にお気づきの点がありましたらお書きください。

  

 ありがとうございました。


お名前          選挙区(東京・大阪)       所属政党

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